作務衣プロジェクト
作務衣(さむえ)
禅宗の修行道場には、数百年続いた修行形態がいまだに厳然と残っています。とくに衣食住という人間の基本的な生活要素に関しては、余分なモノは一切持たない、使わないという規則をかたくなに守っています。たとえば寝起きする場所は、坐禅道場内に、わずか一畳分の^空間が与えられているだけであり、食事はといえば、朝は麦入りのお粥と漬物、昼はご飯と味噌汁に一菜が付くだけです。そして本来夕食は摂らないきまりになっていますが、薬石と称して昼食の残りを食することになっています。
また、着るものに関しては、夏冬の衣(ころも)がそれぞれ1着づつ、そして霜降りの着物(夏冬兼用)1着だけが通常の衣類として許されています。道場では坐禅や托鉢をするだけではなく、修行僧たちは掃除、洗濯をはじめとして、自分自身が生きる糧を得るため、農作業なども行っています。このことを作務(さむ)と言います。ここには「一日作さざれば一日食らわず」という、つまり自主的に働くことによって、自らのいのちを支えているという主張が見えます。そして「静」の中で自己を見つめる坐禅と並行して、「動の中で自己を高める作務の重要性も仕組まれています。作務とは禅宗の大切な修行の一部なのです。
かつてはこの作務も、衣にたすきをかけて行っておりました。しかしいかにもこれでは動きにくいということで、仕事着としての作務衣が登場しました。このように元来作務衣とは、修行僧が編み出したシンプルで活動的な仕事着であったものですが、最近ではお坊さんたちだけではなく、陶芸家や画家、旅館の仲居さん、料理屋の板前さん、仕事を終えてくつろぐオヤジさんなど、たくさんの人たちが愛用するようになってきました。